カーボンニュートラルな「バイオ燃料」導入の企業メリットとは?

脱炭素・低炭素社会実現への貢献が期待される産業界から、いま熱い注目を集めるバイオ燃料。

この生物由来のカーボンニュートラルな燃料が、現在の企業にどのようなメリットをもたらすのか、ESG経営、Scope3、TCFDを含め分かりやすく解説します。



バイオ燃料の概要

バイオ燃料とは、化石資源を除く生物資源(バイオマス)に由来する燃料をいいます。

カーボンニュートラルに貢献する燃料としてすでに一部は使用が始まり、さらなる高品位化を目指した研究開発が精力的に推し進められています。

液体燃料としてのバイオ燃料には、ガソリンを代替する「バイオエタノール燃料」、ディーゼルエンジン用の「バイオディーゼル燃料(BDF)」、航空燃料である「バイオジェット燃料」があります。

バイオエタノール燃料、バイオディーゼル燃料は、それぞれガソリン、軽油と混合して用いられることが一般的です。

バイオジェット燃料は単体で使用されます。

バイオ燃料は、製造にあたって「食用となる農産物を用いる」ものと、「非食用の原料を用いる」ものがあります。

食用の植物を原料とするものは「第一世代バイオ燃料」と呼ばれます。

代表的なものは、トウモロコシ、サトウキビ、各種植物油などです。

これに対し、廃棄物や間伐材、残材など非食用の原料から製造されるのが「第二世代バイオ燃料」です。

最近では、微細藻類などを原料とする「第三世代バイオ燃料」の開発も進められています。


バイオ燃料のメリット

バイオ燃料の利用普及は、地球環境や社会に、そして企業にもさまざまなメリットをもたらします。


社会的なメリット

カーボンニュートラル、CO2の抑制

バイオ燃料自体は、使用(燃焼)することでCO2を発生します。

しかし、その原料である植物は、大気中のCO2を取り込むことで成長したものです。

つまり、成長過程で吸収したCO2を、燃焼で排出するという図式です。

このプラスマイナスゼロの関係がカーボンニュートラルといわれるもので、結果的に大気中のCO2を増加させることはありません。

化石燃料の代替として用いることでCO2の排出を削減することができます。

循環型社会への寄与

石油など化石燃料は、地球に限られた量しか存在しない枯渇性の資源です。

しかし、バイオ燃料は主な原料が植物であることから、再生可能なエネルギーとされています。

また、植物の残滓や廃棄物、使用済みの廃食用油を原料として活用できるため、サーキュラーエコノミー(循環経済)、循環型社会の形成に寄与する持続可能なエネルギーでもあります。

安定したエネルギー供給

再生可能エネルギーとして、太陽光や風力、地熱などの活用が広がっていますが、問題点は自然環境や地域性によるばらつきや不安定さです。

バイオ燃料は計画的な植物の生産や原料の調達を図ることで、安定的な供給が可能になると考えられています。


企業的なメリット

ESG経営、環境経営の推進

ESG経営、環境経営、SDGs……。今、企業活動における脱炭素化・低炭素化の要請は、ますます高まってきています。

そのためのクリーンエネルギーとして太陽光や風力などを利用した自然エネルギーの活用が推進され、水素など次世代のエネルギーの研究開発も進められています。

カーボンニュートラルという特性を持つバイオ燃料は、石油など化石資源由来の燃料に代替することで、GHG(温室効果ガス)排出量を削減することができ、脱炭素化・低炭素化に貢献する現実的で有力な選択肢のひとつと考えられています。

積極的な環境課題への取り組みは、企業の社会的な評価を高め、ひいては融資や投資につながることも期待されます。

Scope3対応によるビジネス拡大

GHG(温室効果ガス)排出量の算定を求める国際的基準であるGHGプロトコルでは、自社内の活動におけるCO2などの温室効果ガスの排出量だけでなく、Scope3と呼ばれる上流・下流の企業の排出量も含めた算出が求められています。

GHG排出量の削減を図る企業は、サプライチェーン上にある取引企業にも削減のための協力を求めることが予想されます。

場合によっては、ビジネスパートナーとして選定されないチャンスロスも想定されます。

実際に、環境指向の高いある海外企業が、日本国内における自社製品輸入の港湾作業において当該業者にCO2対策を問うた、という例がでてきています。

また、昨年4月にはプライム市場に上場する企業にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく、温室効果ガス排出量を含む情報の開示が実質義務化されました。

この動きは、今後、スタンダード市場にも広がっていくと見られています。

このような企業を取り巻く情勢のなか、バイオ燃料の活用はScope3対策、TCFD対策としてのメリットもあるといえるでしょう。


考慮すべき環境への影響

食料との競合

バイオ燃料の主な原料は農作物です。

そして、それらは第一義的には人間の生命を支える食料です。

そうした食料との競合、農業生産への影響といった背景もあり、日本では一般的に行われている廃食用油の活用や、廃棄物、非食用の原料を用いた第二世代、第三世代のバイオ燃料の進展が急がれています。

森林への影響

木質ペレットなどバイオ燃料の製造のために森林伐採が進むことで、大気中のCO2の吸収を担う森林の破壊や生態系の破壊が懸念されています。

基本的には間伐材など未利用の資源を活用していく方向性が指向されています。


まとめ

ESG経営を推し進めるうえで、ひとつの選択肢となりうる「バイオ燃料」のメリットを、サプライチェーンにおいて問題となるScope3対策、TCFD対策という観点を含めて見てきました。

なお、新出光ではバイオ燃料の提供を開始するべく、現在、準備をすすめております。ご期待ください。

バイオ燃料関連のコラムとして、すでに「化石燃料の代替エネルギーとして期待される『バイオ燃料』とは?メリットや課題について解説」「軽油の代替燃料『バイオディーゼル燃料(BDF)』とは?」「注目の代替エネルギー『バイオ燃料』の種類、製造方法を解説」を掲載しています。

併せて、ご一読ください。

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