脱炭素・低炭素という大きな流れの中で、化石燃料を代替するものとして注目を集めているのがバイオ燃料です。
次世代のエネルギーとしては水素をはじめ様々な可能性が試行されていますが、バイオ燃料は着実に研究開発が進んでおり、その進化ともあいまって、さらなる利用拡大が期待されています。
今回は、ますます身近にありつつあるバイオ燃料の種類や製造法など、基礎的な事柄をわかりやすく解説します。
目次
バイオ燃料とは
バイオ燃料とは、動植物などから得られる生物資源(バイオマス・BIOMASS)を原料としてつくられた燃料をいいます。
バイオ燃料の使用にあたってはCO2が発生します。
しかし、植物由来のバイオ燃料の場合、原料となる植物が成長過程で空気中のCO2を吸収しているため、結果的に大気中のCO2を増加させることはありません。
このプラスマイナスゼロの関係が「カーボンニュートラル」といわれるものです。
再生可能なバイオ燃料には、カーボンニュートラル以外にも、既存のインフラを使える、自然エネルギーに比べて安定供給が期待できる……など様々な利点がありますが、何よりも温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出を抑えられることが、社会的にも企業活動にとっても大きなメリットとされています。
バイオ燃料の種類と使用用途
バイオ燃料には様々な種類のものがあり、その原料も使用用途も異なります。
バイオエタノール
ガソリンの代わりとして活用されるのが、バイオエタノールです。アメリカやブラジルでは、バイオエタノールを混合したガソリンが多く使われています。
原料には、バイオエタノールの生産量第一位のアメリカではトウモロコシ、第二位のブラジルではサトウキビといった具合に地域で入手しやすいものが使われます。
日本では多くを輸入に頼っていますが、近年、農林業廃棄物などのセルロース系の生物資源を原料とする「第二世代バイオ燃料」の研究開発が進展しています。
バイオディーゼル(BDF)
軽油の代替燃料として利用されるのが、バイオディーゼル燃料(BDF:Bio Diesel Fuel)です。
原料はパーム油やナタネ油などの植物性の油脂や動物性の牛脂などですが、日本では使用済みの廃食用油が使われます。
バイオディーゼルはトラックなどの他、港湾や建設現場の重機、鉄道、発電機、ボイラーなど活用範囲が広く、多方面から期待が寄せられています。
軽油と混合するBDFの比率により、B5(5%)やB10(10%)、B100(軽油なし)などと呼ばれます。
バイオジェット(SAF)
「持続可能な航空燃料(SAF : Sustainable Aviation Fuel)」の研究開発が世界中ですすめられ、バイオジェット燃料もそのひとつです。
部分的とはいえ、すでに使用している航空会社もあり、国は30年までに国内航空会社が使う燃料の10%をSAFにする目標を掲げています。
バイオジェットの原料として様々な候補にあがっていますが、植物油(廃食用油)を用いたものでは、高品位なバイオディーゼルを製造する方法である水素化分解(HVO)という技術が使われています。
バイオガス
主として発電用に用いられるバイオ気体燃料です。
家畜の排泄物や食品廃棄物などを、微生物の働きで発酵させることで製造されます。発電規模は400kW程度で比較的小規模な利用に適しています。
木質バイオマス
樹木の伐採や製材の際に発生した残材、住宅の解体、街路樹の剪定などで出たバイオマスを薪、チップ、ペレット等に加工し、燃料として利用するものです。
また、木質バイオマスを発酵させ、バイオエタノールを製造することも可能になっています。
バイオ燃料の製造方法
バイオ燃料の製造においては、絶え間ない研究開発が行われており、日々進化しているといっても過言ではありません。
ここでは現時点で実施されている、各バイオ燃料の製造方法を解説します。
バイオエタノール
基本的な製造方法
サトウキビなどの糖の場合はそのまま、トウモロコシなどのデンプンは酵素によって分解することで糖にしたうえで、酵母菌を用いて発酵させます。
発酵後、蒸留、脱水処理を行うことでバイオエタノールが完成します。
これは蒸留酒とほぼ同じ作り方です。
セルロース系製造方法
植物の茎、葉、幹の部分の主な組成であるセルロースやヘミセルロース、リグニンを原料にして、酵素や薬品で糖を生成。
その後は、上記の製造方法と同じ工程でバイオエタノールを製造します。
糖の種類によっては特殊な微生物を用いることがあります。
この非可食バイオマスから製造されるセルロース系バイオエタノールは、「第二世代バイオエタノール」と呼ばれます。
バイオディーゼル(BDF)
FAME:脂肪酸メチルエステル
原料となる植物油にメタノールとアルカリ触媒を加え、加熱。メチルエステル化することでFAME(Fatty Acid Methyl Ester:脂肪酸メチルエステル)を得ます。
その後、副次的に生成されたグリセリンを分離除去し、バイオディーゼル燃料を完成させます。
これは「第一世代バイオディーゼル」と呼ばれ、現時点で主流を占める安定的な製造方法です。
HVO:水素化分解油
植物油に水素を加え、一定程度の高温高圧化で触媒をもちいて水素化分解します。
水素を用いることからHVO(Hydrotreated Vegetable Oil:水素化分解油)と呼ばれます。
最後に副次的に生成されるプロパンを除去すれば、高品位なバイオ燃料が完成します。
次に解説するバイオジェット燃料においても、この技術を使っているものが注目されています。
バイオジェット(SAF)
バイオジェット燃料の製造においては、原料として油や藻類、木屑など様々なものが提案されており、確立した製造方法はありません。
最も有力な方法が、上記のHVOの項目で解説した植物油を使った製造方法といわれています。
まとめ
脱炭素、低炭素への対応は、企業にとってますます重要かつ喫緊の課題となっています。
そのための方策は様々ですが、今回ご紹介した「バイオ燃料」も、極めて現実的で効果が期待できる選択肢のひとつと言えるのではないでしょうか。
バイオ燃料関連のコラムとして、すでに「化石燃料の代替エネルギーとして期待される『バイオ燃料』とは?メリットや課題について解説」、「軽油の代替燃料『バイオディーゼル燃料(BDF)』とは?」でも解説しています。
併せて、ご一読ください。また、脱炭素、低炭素関連の話題を、今後も取り上げて行きます。ご期待ください。
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