サプライチェーン排出量Scope3算定の手順を解説

脱炭素、カーボンニュートラル。21世紀のなかばを目途に実現が期待されている地球的な課題です。

そのような状況で、いま企業には自社のみではなく、自社が関連する活動領域全般における温室効果ガスの総排出量=サプライチェーン排出量の把握・算定が求められるようになってきました。

今回は、その算出にあたっての具体的な進め方をご紹介します。




サプライチェーン排出量算定とは

サプライチェーン排出量の算定にあたっては、自社の排出量(Scope1=燃料の燃焼など、Scope2=電気の使用など)以外の上流・下流にあたる他社の排出量の算定がキーになってきます。これがScope3と呼ばれるものです。

Scope3は上流側、下流側で合計15のカテゴリに分けられ、該当するカテゴリでそれぞれ温室効果ガスの排出量を算定します。

そして、Scope1、Scope2、Scope3それぞれの排出量を合計したものが、サプライチェーン排出量となります。


Scope3排出量算定のための4ステップ

では、具体的にサプライチェーン排出量を算定する手順や考え方を見ていきましょう。算定にあたっては、系統的に進めることが重要となり、下で解説するように<算定目的>→<算定範囲>→<カテゴリー分類>→<算出>とステップを踏んでいくことでスムーズな算出が可能となります。


ステップ1 算定目的の明確化

最初に行うことは、事業者にとってサプライチェーン排出量の算定の目的をはっきりとさせることです。排出量の概要を把握するためなのか、環境経営の指標に活用したいのか、CSR情報の開示に用いるのかなど、その目的によって求められる算定の精度や範囲が異なってくるからです。

もちろん、サプライチェーン排出量の算定にあたっては、精度を高めることが望ましいのは言うまでもありません。しかし、算定のためのコストバランスを考慮して、算定目的に添った現実的な算定精度を意識することが大切だとされています。


ステップ2 算定範囲の確認

次に算定対象の範囲を確認します。原則として次の範囲が対象となります。

●温室効果ガス(CO2、メタン、一酸化二窒素など)

●組織的範囲(自社、上流・下流の事業者)

●地理的範囲(国内および海外)

●活動の種類(温室効果ガスの排出に関するすべての活動)

●時間的範囲(1年間のサプライチェーン排出)

サプライチェーン排出量では、個社ではなくグループ単位を自社の範囲とします。また、時間的範囲においては、上流・下流の排出時期と自社の年度が異なってくる場合があります。


ステップ3 カテゴリーへの分類

サプライチェーンにおけるそれぞれの活動を、下表にあるScope3の1〜15のカテゴリに分類していきます。


各カテゴリへのScope3の分類結果(例)



ステップ4 各カテゴリの算定

ステップ4では、データを収集する項目とデータ収集先を整理したうえで、データを収集します。それをもとに以下の基本式を用いて各カテゴリの排出量を計算し、すべてを合計することでScope3排出量を算定します。




まとめ

脱炭素社会に向け、温室効果ガスの削減は多くの企業にとって、ますます重要なテーマとなってきています。自社のみならずサプライチェーン全体の排出量の把握・管理に関しても、ますます社会的な要請が高まってきています。

今回は、サプライチェーン排出量のキーともいえる、Scope3排出量の具体的な算定の進め方を見てきました。

サプライチェーン排出量およびScopeに関しては「温室効果ガス(GHG)プロトコルとScope(スコープ)とは?」「温室効果ガス排出量算定のキーとなる、Scopeの定義と指針」「サプライチェーン排出量Scope3の算定方法とは」でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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