温室効果ガス(GHG)プロトコルとScope(スコープ)とは?

言うまでもなく、カーボンニュートラルへの取り組み・温室効果ガスの削減は、すべての企業にとって必須の課題となっています。

このような状況の中、昨今、温室効果ガスの把握・管理においては、「自社の排出」から「サプライチェーン全体の排出」へと流れが変わってきています。

今回のコラムでは、その算定・報告の基準として世界的に推奨されている「温室効果ガス(GHG)プロトコル」と「Scope(スコープ)」について解説していきます。



温室効果ガス(GHG)プロトコル」「Scope(スコープ)」の概要

「温室効果ガス(GHG)プロトコルイニシアチブ」はWRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が共催する組織です。*GHG : Greenhouse Gas

同機関が、サプライチェーン全体の排出を算定することを目的として2011年11月に策定したのが「GHGプロトコル」で、その中核をなすのが「Scope(スコープ)」という概念です。

GHGプロトコルは、格付け機関などによる各種の調査項目にも取り入れられ、現在、温室効果ガス排出量の算定と報告の世界共通基準として広く使用されています。

Scopeは、排出される温室効果ガスの排出プロセスや事業者等によって、「Scope1=直接排出量(自社による燃料の燃焼など)」「Scope2=間接排出量(他社から供給された電気や熱、蒸気の使用など)」「Scope3=そのほかの排出量(自社の活動に関連した他社の排出)」に分けられ、これら3区分の合計がサプライチェーン全体の排出量として算定されます。

サプライチェーン排出量 = Scope1排出量 + Scope2排出量 +  Scope3排出量

出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html


自社の排出にとどまらず、原材料の調達・製造・物流・販売・廃棄など、流れ全体で排出される温室効果ガス排出量を客観的に算定し管理することで、排出量削減につなげていく考え方といえるでしょう。


温室効果ガス排出量管理をめぐる動き

「製品のLCA(ライフサイクルアセスメント)」という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。

製品の原料調達・製造・物流・販売・廃棄までの排出量を評価することを指します。

これに対し、今回のテーマのようにサプライチェーン排出量を評価することは、「組織のLCA」と表現されることがあります。

製品にとどまらず、サプライチェーン上での事業者の活動に伴う排出量を算定することは、企業活動全体を管理することにつながるからです。

カーボンニュートラルに向けた取り組みが世界的に進展するなか、サプライチェーンで発生する温室効果ガスの排出量管理は重要度を増しています。

排出の全体量を把握し対外的に開示していく動きが、社会的要請の高まりともあいまって、今後ますます強まっていくと思われます。


排出量管理がもたらすメリット

カーボンニュートラルへの対応、温室効果ガスの削減、そのためのベースとなる排出量の算定…。

直感的に、手間とコストを感じる方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、サプライチェーン排出量の管理は、大きなメリットを企業にもたらす可能性を持っています。


削減領域の明確化

サプライチェーン上の総排出量と排出源ごとの割合を把握することで、排出量を削減すべき対象や領域が特定しやすくなります。

優先的に削減すべきターゲットが絞り込めれば、より合理的・効率的・計画的にカーボンニュートラルに取り組むことができます。


連携した取り組みによる効果UP

サプライチェーン排出量の算定では、サプライチェーン上の他事業者との情報交換や連携が欠かせません。

このような協働関係から、環境負荷を低減する今までになかった効率的な取り組みがうまれたり、新たな取り引きをもたらす可能性があります。


企業価値をアピール

サプライチェーン排出量を自社のレポートやWEBサイトで公にすることは、環境対応企業としての企業価値を高めることにつながります。

また、中間素材メーカーなど、最終製品の排出量削減効果への貢献が伝えにくい事業者でも、削減貢献量を用いてアピールしていくことができます。

さらに、ESG投資などでの高評価も期待できます。


まとめ

カーボンニュートラルという大きな流れの中で、企業に求められる温室効果ガスの削減。

その排出量の算定の国際的な基準となっているGHGプロトコルおよびScopeの概要を紹介してきました。

実際に排出量を算定するわけでなくても、GHGプロトコルが示しているサプライチェーン排出量算定の考え方を知ることは、企業の温室効果ガス削減対策の大きなヒントになるものと思われます。

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