地中熱利用の新しい換気システム『ジオパワーシステム』そのメリット・デメリット

環境に優しい再生可能な自然エネルギーとして関心が高まっている地中熱。

そんななか、工場や生産現場などにおいて、省エネ・節電効果の高い冷暖房としてだけでなく、クリーンな空気循環で快適な労働空間を創出する24時間換気システム「ジオパワー」に注目が集まっています。

経産省所管の補助金事業に採択された、この先進的な地中熱利用システムをご紹介します。


夏は冷たく、冬は暖かい地中熱

出典:GEO POWER SYSTEM HPより
https://www.geo-power.co.jp/geopower/

地中9メートル付近の温度は、四季にかかわらずほぼ一定しています。

地域や地方によって異なりますが、平均すると17℃前後。つまり、気温が高い夏には冷たく、低い冬には暖かい。

井戸水や鍾乳洞などで、このことを実感されたかたも多いのではないでしょうか。


ジオパワーシステムとは

出典:GEO POWER SYSTEM HPより
https://www.geo-power.co.jp/info/1841

ジオパワーシステムは、地中に埋設した熱交換パイプ(ジオパイプ)を通して外気と地中の熱の熱交換を行うことで、夏は涼しく冬は暖かい風を発生させます。

建物全体を換気しながら室温を緩やかに調整する、人にも環境にも財布にも優しいシステムです。


夏のしくみ

出典:GEO POWER SYSTEM HPより
https://www.geo-power.co.jp/geopower/m-summer.html

夏の高温多湿な空気を地中熱パイプに送り、地中熱で冷やした空気を建物内に冷風として吹きだします。

パイプ内では空気を冷やすだけでなく、自然の原理を利用した除湿や空気浄化機能も働きます。

地下水利用、ヒートポンプを併用することもできます。


冬のしくみ

出典:GEO POWER SYSTEM HPより
https://www.geo-power.co.jp/geopower/m-winter.html

冬は冷たく乾いた外気を地中熱パイプに送り、地中熱で温められた空気を建物内に吹きだします。

温度設定はできませんが、温度の底上げができるため、暖房機などを使って小さなエネルギーで短時間に屋内温度を上げることができます。

ヒートポンプを併用することも可能です。


換気のしくみ

出典:GEO POWER SYSTEM HPより
https://www.geo-power.co.jp/geopower/m-kanki.html

ジオパワーが利用する地中熱は無償・無限で、その省エネ効果は群を抜いています。

通常の換気は屋内空気と外気を入れ替えるため、夏の熱気、冬の冷気が屋内に入り、どうしてもロスが大きくなります。

また、排気ガスや花粉などで汚れた空気を、そのまま取り込むことにもなります。

ジオパワーでは、パイプ内で「空気浄化」や「調湿」効果が働き、屋内は常にキレイで快適な空気に満たされます。


空気の浄化

出典:GEO POWER SYSTEM HPより
https://www.geo-power.co.jp/geopower/cleanair.html

自然で優しい緩やかな温度の調整に加え、ジオパワーの大きな特長のひとつがクリーンな空気です。

空気中の塵・埃・花粉・PM2.5などはハイプ底の水近くを通過する際、水に吸着され、キレイな空気となって屋内に送りだされていきます。

また、夏や梅雨の湿度の高い季節はパイプ内の結露により余分な水分が取り除かれ、逆に冬の乾燥した空気はパイプ底の水で加湿され、一年中、常に快適で健康的な環境を提供し続けます。


ジオパワーシステムのメリット・デメリット

 地中熱利用にはさまざまなタイプのシステムがあります。

それぞれに特徴があり、利用する目的や場所にあわせて選択されます。

ジオパワーは「空気循環」と呼ばれるカテゴリーのシステムで、生産現場などにおける職場環境の向上に貢献する先進技術として注目されています。

メリット

どの様な最先端のしくみでもメリット・デメリットが存在します。
その中から、まずはジオパワーシステムのメリットを見ていきましょう。

快適な労働環境

ジオパワーは、地下熱という自然のままのパワーを利用し、換気しながら、適度で快適な温度に建物全体を緩やかに調整します。

しかも、空気中の花粉やPM2.5を抑え込むことで、作業効率の向上も期待できる環境創出に貢献します。

冷暖房費を削減

地下熱は、日本中のどこにでもあり、天候も昼夜も問わない自然のエネルギー源です。

しかも、無尽蔵で無償という持続可能で経済性に優れたエネルギーでもあります。

従来型の冷暖房に頼りきりにならない空間を実現することで、デマンドを抑制し空調費の大幅な削減をもたらします。

CO2削減

地中熱を利用することでトータルな節電効果をもたらす、省エネルギー設計のジオパワー。

地球温暖化防止の至上命題ともいえるCO2の削減に大きく貢献します。

補助金

ジオパワーは、その先進性が認められ「平成4年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」をはじめ、経産省や環境省所管の公的補助事業の対象となっています。

※平成4年度の公募は、すでに締め切られています。また、地方自治体においてもさまざまな省エネ・CO2対策補助制度が実施されています。


先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金

  • 執行団体
    一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)(経産省)
  • 概要
    資源エネルギー庁に設置された「先進的な省エネ技術等に係る技術評価委員会」において決定した審査項目に則り、SIIが設置した外部審査委員会で審査・採択した先進設備・システムへ更新等する事業
  • 補助率
    中小企業:10/10以内
    大企業:3/4以内
  • 補助対象者
    工場等(民間企業)

令和4年度 PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金)

  • 執行団体
    一般社団法人環境技術普及促進協会(ETA)(環境省)
  • 概要
    未利用熱の活用や廃熱を有効活用する設備導入において、電気又はガスを活用した熱利用設備を新設や増設する設備に対して支援を行うことを目的
  • 補助率
    1/2
  • 補助対象者
    民間企業、学校法人、医療法人、社会福祉法人等

令和4年度 SHIFT事業(工場・事業所における先導的な脱炭素化取組推進事業)

  • 執行団体
    一般社団法人温室効果ガス審査協会(環境省)
  • 概要
    2030年度削減目標や、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、工場・事業所での脱炭素化のロールモデルとなる取組(削減目標の設定、削減計画の策定、設備更新・運用改善の実施)を支援
  • 補助率
    計画策定支援:1/2
    設備更新:1/3
  • 補助対象者
    年間CO2排出量50t以上の工場・事業場に対して「脱炭素化促進計画」を策定済である事業者

デメリット

デメリットとしては、導入コストがかかる点があげられます。しかし、節電効果を含めた低いランニングコストを考え合わせれば、一概に決めつけられないともいえます。


まとめ

冷暖房費の削減にとどまらず、作業効率の向上、職場環境の改善、そして地球環境の向上につながる、地下熱利用換気システム「ジオパワー」をご紹介いたしました。

ジオパワーは、環境に優しい再生可能エネルギーとして注目されています。

快適な労働環境をつくりだせるほか、電気代やCO2の削減にも貢献します。

補助金を活用することで、コストを抑えて導入することができるところもメリットです。

地中熱自体のメリットやしくみ、補助金について詳しく知りたいかたは、「注目の再生可能エネルギー「地中熱」とは?しくみとメリットを解説」で詳しく記載していますのでご覧ください。

株式会社新出光ではジオパワー以外にもさまざまなサービス・ソリューションを展開しています。

CO2削減やコスト削減でお悩みの方は、お問い合わせフォームよりぜひご相談ください。