アンモニアで脱炭素?~後編~

アンモニアで脱炭素?~後編~ 前編では、アンモニアについて特徴や脱炭素に向けて期待されている理由をお話ししてきました。後編では、アンモニアの課題や、現在行われている実証実験について紹介していきます。



本当に脱炭素の担い手となるか?アンモニアの課題


■アンモニアの課題とは?


燃焼時にCO₂を排出しないため、脱炭素に向けて期待されているアンモニアですが、課題もあります。

前編で、全国の石炭火力発電所でアンモニア20%混焼を行った場合のシミュレーションについて触れましたが、そのケースのアンモニア需要量はおよそ2000万トンになります。この量は世界のアンモニア輸出入量とほぼ同じです。

つまり、アンモニア燃料の普及には、アンモニア自体の確保が必要不可欠なのです。安定したサプライチェーンを構築するためには、アンモニアの生産量を増やすこと、日本に入ってくる輸入量を増やすこと、そして水素と窒素を合成してアンモニアをつくる技術開発も必要です。

■各方面で行われている実証実験


課題もあるアンモニアですが、その課題解決に向けて各方面で実証実験が行われています。今回はそのいくつかをご紹介します。

東京電力と中部電力が折半出資するJERAは、2021年10月より碧南火力発電所でアンモニアを混焼する実証実験を始めました。初めは、混焼率0.02%から開始し、2024年までに20%まで高めることを目指しています。

また、JERAは2030年代に保有する石炭火力発電所全体でアンモニアの20%混焼を、2040年代にはアンモニア専焼技術の確立を目指す指針を持っています。

アンモニアの生産量を増やすことが課題解決のために必要なことのひとつですが、それに向けた実証実験も動き出しています。

旭化成と日揮ホールディングスは、再生可能エネルギーを利用してつくった水素からアンモニアの生産を目指した実証実験を開始しました。太陽光発電の電力から水の電気分解により水素を取り出し、空気中の窒素と合成させてアンモニアをつくる構想です。2024年度の生産開始を目指しています。

次世代エネルギーとして期待されている実証段階のアンモニアですが、同じく次世代エネルギーの筆頭とされる水素と両輪で普及を目指していくことが望ましいと考えます。NH3という分子式からも分かる通り、アンモニアの中に水素は含まれています。水素と比較して輸送や貯蔵が容易なため、アンモニアは水素の乗り物、「水素キャリア」としての役割も期待されています。

2021年現在、実際に動き出しているアンモニアですが、実証実験の目標等を見ると今後5年10年で大きく変わっていくことが予想されます。実証がどのような結果になるのか、どのように普及が進んでいくのか継続して情報収集していきますので、またこちらも今後ご紹介します。

今回のコラムに関してのご意見や掲載してほしい話題などございましたら、お問い合わせフォームよりお知らせください。 お待ちしております!

参考:
JERA プレスリリース
「大型の商用石炭火力発電機におけるアンモニア混焼に関する実証事業の採択について」
旭化成 プレスリリース
「大規模水素製造システムを活用したグリーンケミカルプラント実証プロジェクトを開始」

文:エネルギー事業部営業戦略課 髙野龍太郎