水素について0からお話しします!~中編~

前回まで水素についてそもそものお話から説明していきました。今回は、実際に水素がどのような利用が見込まれているのかを解説する前に「水素基本戦略」という計画についてお話ししていこうと思います。

■水素基本戦略とは?
「水素基本戦略」とは、2017年12月に当時の安倍政権下で開かれた「第2回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」において決定されたものです。
これは、2050年を視野に水素をエネルギーとして活用するための方向性やビジョンを示したもので、2030年までの行動計画も提言しています。

水素基本戦略が策定された背景として、日本が抱える大きな課題があります。
1つ目は、国内の乏しいエネルギー自給率です。約94%を海外からの化石燃料に依存しており、エネルギーセキュリティ(※)が非常に脆弱であるということです。
そして2つ目は、期限が決められているCO₂排出削減への対応です。2030年に迫っている京都議定書で決められた削減目標、それに加え、パリ協定を踏まえた2050年までの長期的な削減目標もあります。
こういった大きな課題への対応として、水素が期待されており、水素基本戦略が策定されました。

(※)政治、経済、社会情勢の変化に過度に左右されずに、国民生活に支障を与えない量を適正な価格で安定的に供給できるように、エネルギーを確保すること


■水素基本戦略の概要
水素基本戦略は水素社会実現に向けて、以下の条件を掲げています。
・低コストな水素利用の実現
・国際的な水素サプライチェーンの開発
・国内再生可能エネルギーの導入拡大と地方創生
・電力分野での利用
・モビリティでの利用
・産業プロセス、熱利用での水素活用の可能性
・燃料電池技術活用
・革新的技術開発
・国際展開
・国民の理解促進、地域連携


以上の10点が挙げられていますが最も重要視されているのは、1つ目の「低コストな水素利用の実現」です。
具体的な目標として、水素のコストをガソリンやLNGなど従来エネルギーと同じ程度のコストにすることを目標として掲げています。現在、1Nm3あたり100円のコストを、2030年には30円に、将来的には20円にすることを目指しています。

■水素の低コスト化には何が必要?
水素の低コスト化のためには、3つの条件があります。
① 安価な原料を使っての水素製造
② 水素の大量製造や大量輸送を可能にするサプライチェーン構築
③ 燃料電池自動車(FCV)や発電、産業利用などでの水素の大量利用

このように実現のためには、水素を供給する側と利用する側の両面からの取組が必要になります。供給側では、国内外様々な実証実験が行われており、利用側でもFCVや発電技術の開発など動きが活発に行われています。

今回は「水素基本戦略」についてお話ししていきました。次回は水素の低コスト化に向けての動向、そして私たちの生活の中で水素はどのように利用が見込まれているのかについてお話ししていこうと思います。

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参考:
経済産業省『水素基本戦略』
経済産業省『水素・燃料電池戦略ロードマップ』
経済産業省 資源エネルギー庁HP『ようこそ!水素社会へ 水素・燃料電池政策について』

                                

文:エネルギー事業部営業戦略課 髙野龍太郎