水素について0からお話しします!~後編~

前回は水素をエネルギーとして活用するための方向性やビジョンを示した「水素基本戦略」についてお話していきました。
今回は、水素エネルギー導入に向けての課題やそれに対する取組、私たちの生活の中で水素がどのように利用が見込まれているかをお話していきます。



■水素エネルギー普及に向けての課題と必要な取組
水素エネルギーの普及にあたっては多くの課題があります。大きく分けて4つの視点から解説していきます。

①技術的技術的課題
・海外資源から水素を効率的に生成するための製造方法の技術革新
・水素発電技術の確立
・定置用及びFCV用燃料電池の低コスト化、高耐久性を目指した開発

②インフラ整備
・水素ステーションや水素タンクの整備
・水素供給システムの確立
・既存インフラの活用可否の検討

③コストの削減
・水素エネルギー及び関連機器(燃料電池、FCV等)と、既存燃料・機器等とのコスト差



④制度面の課題
・燃料電池自動車や水素ステーションに関する現状の規制の見直し
・水素発電や海外の未利用資源を利用した水素の輸入など、これまでに想定していない利用形態に対する規制や基準・標準など制度面の整備


■私たちの生活の中で水素はどのように使われる?
このようにカーボンニュートラル実現に向けて期待されている水素には、まだまだ多くの課題が山積していることが分かりました。
では、そういった課題の解決を図りながら、私たちの生活にどのように水素が利用されていくと予想されているのか解説していきます。

出展:トヨタ自動車HP

〇モビリティ
・FCV(燃料電池自動車)―目標:2025年20万台、2030年80万台
―価格:2025年頃にFCVをHV並の価格競争力へ(FCVとHVの価格差300万円→70万円)
―主な車種:
トヨタ「MIRAI」、 ホンダ「クラリティフューエルセル」
・FCバス
―目標:2030年1,200台
・フォークリフト
―目標:2030年1万台
・水素ステーション
―現状(2021年8月):166箇所(12箇所整備中)
―目標:2030年900箇所
※トラック、船舶、鉄道分野での水素利用は現状指針策定や技術開発を進めている段階

〇発電
・水素発電
―2030年頃の水素発電の商用化目標

〇定置用燃料電池
・エネファーム
―目標:2030年530万台
―コスト、投資回収年数の低減

前回解説した「水素基本戦略」を実現するため、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」が策定されています。このロードマップでは、以上のように2030年までの水素導入の目標が掲げられています。目標達成のためには、まだまだ大きな技術革新が必要なことが分かります。

今回、前中後編でエネルギーとしての「水素」について、そもそも水素とは?というところから、導入や普及に向けての課題、そしてどのような利用が予想されているのかについて解説していきました。
今後のコラムでは、今回ご紹介したFCVや水素発電などについてさらに掘り下げてお話ししていこうと思います。

今回のコラムに関してのご意見や掲載してほしい話題などございましたら、お問い合わせフォームよりお知らせください。 お待ちしております!

参考:
経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ」
経済産業省資源エネルギー庁「今後の水素ステーション政策の方向性について」
NEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素社会実現を目指して」

文:エネルギー事業部営業戦略課 髙野龍太郎