東京2020オリンピックの聖火

新型コロナウイルスの感染拡大により、1年延期された東京オリンピック、パラリンピック。 東京都の緊急事態宣言などによるコロナ禍の混乱により、開催自体が危ぶまれていましたが、2021年7月23日、無観客や規模を縮小した開会式の中で、聖火の火は灯されました。

今回の東京五輪は世界的なスポーツの祭典という以外でも、環境問題への配慮を重視した意味のあるイベントでした。

まずは聖火の火。
聖火リレーの走者により引き継がれたこの火は、福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」で生成された水素によって灯されたものです。
水素による聖火は五輪史上初めてのことです。

福島県では、福島全体を新しいエネルギー社会のモデルを創り出す拠点にすることで、エネルギー分野から復興を後押ししようとする、「福島新エネ社会構想」が進められてきました。
今回の東京オリンピック・パラリンピックでの活用に向けて、2017年8月から、10MWもある世界最大級の水素製造設備を使い、水素を作るというプロジェクトが始められてきました。
かつては震災のあった地域から再生可能エネルギーや未来の水素社会を切り拓く先駆けの地として着々と前進しています。


聖火以外では、大会用車両として使用される燃料電池自動車の燃料として、選手村の一部で照明や空調の発電に利用していたりと、至るところで水素活用の試みがなされています。

また、選手村に隣接して、仮設の水素ステーションを整備し、大会期間中に24時間体制で車両へ水素を供給しています。

政府はグリーン成長戦略で、水素を発電や産業、運輸などに幅広く活用される「カーボンニュートラルの鍵となる技術」と位置付け、2030年に最大300万トン、2050年に2000万トン程度を導入することを目指しています。

コロナ禍の中で開催されたオリンピック・パラリンピック。
平和の祭典という以外でも水素社会への未来に向けてのメッセージが込められた意味ある祭典なのです。



文:エネルギー事業部 産業エネルギー課 インサイドセールスチーム