物流業界必見!価格競争から脱炭素競争の時代へ?!

「カーボンニュートラルは言葉としては知っているが、我が社にとってどれほどの課題なのかピンとこない」という方も多いと思います。

確かに今世紀半ば頃を達成の目標としているカーボンニュートラルですが、物流業界にとっては荷主となる企業の多くで既に取り組みが始まっており、取引関係にある中小企業にとって無縁の話ではありません。

今回は、その現状と今後の対策を考えていきます。




カーボンニュートラルとビジネスの現状

脱炭素、カーボンニュートラル…。地球規模で取り組みが求められている喫緊の最重要課題です。

とりわけ影響力の大きな大企業では取り組みが急速に進展しており、その協力会社である中小企業にとっても、企業存続を左右する経営課題といっても過言ではなくなってきています。

今、CO2をはじめとする地球温暖化ガス(GHG)の排出抑制をすすめる企業は、自社の排出抑制(Scope1、Scope2)だけでなく、上流下流の協力会社の排出(Scope3)も注視しています。

というのも、国際的な基準であるGHGプロトコルにおいては自社のみならず、サプライチェーン全体の排出量を問題にしているからです。

このような状況の中、荷主企業が取引先に対してScope3への対応要請をする動きが拡がってきています。

今後、脱炭素への取り組みの有無や進展度合いによって、取引先の選択が進むのではないかとされており、すでに一部の外資系企業では選別が始まっていると言われています。


海外先進企業に見る脱炭素の取り組み

では、実際に環境課題を重視する海外の先進企業の事例を見ていきましょう。

米国の代表的なアウトドア用品のメーカーであるP社は、「故郷である地球を救う」を掲げ、環境再生型の有機農業やソーラー・シェアリングとともに、サプライチェーンの改善に積極的に取り組んでいます。

フランスの大手食品メーカーD社は、再生素材を利用できる工場を新設。この新工場の敷地内には鉄道用の駅も新設され、サプライチェーンにおけるカーボンニュートラルの実現が企図されています。

日本でも人気のコーヒーチェーンS社は再エネ利用をはじめ、世界の産地などサプライチェーン全体のカーボンニュートラル化に削減目標を設定して取り組んでいます。

以上の事例が示すように、環境に配慮する先進的な企業は、自社のみならずScope3を含めた全体での脱酸素に積極的に関与しており、この傾向は今後ますます拡がっていくと予想されています。


環境経営のメリット〜脱炭素は人のためならず〜

第1章でも見たように、カーボンニュートラルへの取り組みは、今後のビジネスチャンスの確保・進展にとって、ますます大きな比重を持ってくると思われます。

価格やサービス、品質といった従来の差別化要素に加え、脱炭素への取り組みが企業をさらなる発展に導く競争優位性を獲得する時代が来ようとしています。

物流業界でいえば、競争優位性の獲得→ビジネスチャンスの拡大・収益増加→給与アップ→懸案の乗務員不足の解消にもつながるという「良い連鎖」が大いに期待できます。

脱炭素、カーボンニュートラル。それは、地球のため、環境のため、人類のためというだけではなく、自分の会社のためでもあるのです。

その意味でも、他社に先駆け、いち早くカーボンニュートラルに取り組みことが肝要となってきます。

カーボンニュートラルの実現は、概ね今世紀半ばを達成時期の目標としていますが、中小の企業経営にとってはすでに脱炭素競争の時代に入ったと言うべきでしょう。


カーボンニュートラルに向けた様々な支援

カーボンニュートラルに向けた企業の取り組みに関しては、国や自治体による様々な支援策が設けられています。

支援策は期間が限られていたり、新たな支援策が登場する可能性も高いため、環境省や経済産業省、自治体などの公式ホームページを適時チェックしておくことが大切になります。

環境省(エネ特ポータル)https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/

経済産業省(温暖化対策・中小企業関連) https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/SME/index.html

中小機構(カーボンニュートラルに関する相談)https://www.smrj.go.jp/sme/consulting/sdgs/favgos000001to2v.html


まとめ

カーボンニュートラル、脱炭素といった動きが大きなうねりとなって押し寄せてきており、とりわけ中小企業にとって、それが社会貢献といった意味合いではなく、今後の経営戦略に直に結びついたものであることを見てきました。

また、本文では触れませんでしたが、大企業は、気候変動に対しての取り組みの具体的な開示を推奨するTCFDを重視するようになっており、その点からもScope3対策とあわせて、中小企業にとってカーボンニュートラル対策の必要性が高まっています。

どこか他人事としてきたところがあるカーボンニュートラルの問題を、「我が事化」する時代に入り始めていると言えるでしょう。

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