企業活動を脅かす2024年問題とは?

「何も対策を講じなければ物流が停滞しかねない『2024年問題』に直面している」。

岸田首相が今年3月31日の関係閣僚会議で述べた言葉です。

「2024年問題」とは、来年の4月から始まるトラックドライバーの労働時間の規制に伴う、物流のさまざまな問題のことです。

この問題は物流・運送業界にとどまらず、広く社会に影響を及ぼす問題であり、その解決に向けて一般企業、消費者の理解と協力が求められています。




来年4月に開始、物流業界の労働時間規制

2019年、「働き方改革」の一環として改正労働基準法が施行され、残業時間の罰則付き上限規制が定められました。

しかし、もともと労働時間が長い物流・運送業界のトラックドライバーには5年間の猶予期間が設けられました。

その猶予期間が終わり、規制が来年の2024年の4月から始まります。

上限時間は一般的な業界の年間720時間より長い960時間ですが、それでも現在の業務量をこなしきれないことから、さまざまな問題の発生が懸念されています。



2024年問題の社会への影響

では、このトラックドライバーの労働時間短縮が、社会や産業界にもたらす問題を具体的に見ていきましょう。


約3割の荷物が届かなくなる?

民間シンクタンクが今年1月、トラックドライバーの不足によって、2030年には荷物量の35%が運べなくなるとの推計を発表しました。

割合が高いのは東北(41%)、四国(40%)、北海道と九州(ともに39%)ですが、大都市圏でも近畿(36%)、関東(34%)で物流の停滞が予想されています。

長距離輸送ができなくなる?

ドラックドライバーの労働時間が長くなる理由はさまざまですが、遠隔地への長距離輸送も大きな要因のひとつです。

2022年に全日本トラック協会が会員企業に行った調査で、「時間外労働が年間960時間超となるドライバーの有無」を尋ねたところ、全体では約27%だったのに対し、長距離ドライバーに限ると約48%の企業が「いる」と回答しています。

輸送料金が高くなる?

現状では、トラックドライバーの多くが時間外労働によって収入を補っているとされています。

しかし、残業時間の規制によってその分の報酬が減り、収入全体が減少すると懸念されています。

さらに、そのことでトラックドライバーの転職や離職が増え、人手不足に拍車をかけるという声もあります。

こういった事態を避けるために人件費が上がり、結果として運賃に反映されるのではないかと懸念されています。



物流業界の対策促進。そして荷主の理解

運送事業者は「2024年問題」への対応を進めています。

例えば、前述の長距離輸送においては、中継地点を設け、ドライバーの乗り替えやトレーラーのヘッド交換、あるいは荷物の積み替えを行うことで、日帰り勤務、労働時間の削減を可能にする「中継輸送」の取り組みが始まっています。

しかし、「2024年問題」は物流業界の業務の効率化だけで解決できるものではありません。

物流業界の努力とあわせて重要になってくるのが、荷主(発荷主、着荷主)の対応です。

荷主の都合による荷待ちの待機時間の削減、荷役作業の軽減はもとより、「2024年問題」を自分事として捉えた対応が必要だとされています。

現実に、スーパー業界の一部では納品期限の延長などを複数社共同で実施することで、物流の効率化に取り組むことが志向されています。

また、全国の出荷拠点での積み込み時間の短縮につながるパレットの一斉導入と、それにあわせた段ボールの規格の見直しを行った農業生産業者もあります。



まとめ

間近にせまった物流クライシス「2024年問題」を、社会・経済問題という視点から見てきました。

「2024年問題」の解決に向けて、物流業界と荷主企業の意識改革が必要です。

政府も「スピード感をもって対策を講じていく」としており、関係閣僚会議では
●荷主と物流業者との商慣行の見直し
●DXによる物流の効率化
●荷主や消費者の行動変容を促す仕組み
を検討の方向性として打ち出しています。

「2024年問題」に関しては、「2024年問題。物流・運送事業者に求められる対応とは?」でも詳しく記載していますので、ぜひご一読ください。

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