雷が多い地域と要因〜雷サージによる企業の被害についても解説

地震・雷・火事・親父。昔から人々に恐れられてきた雷ですが、近年では電子機器等の浸透もあり、落雷による被害は企業活動においても重要問題になっています。

今回は、地域により違いがある雷の発生時期や頻度、雷のメカニズム、被害をもたらす落雷の種類、対策法などをわかりやすく解説します。




雷の多い地域&その特徴

雷が多い県がどこか、ご存じですか?

下の表をご覧ください。

日本でいちばん雷が多い地域は石川県で、雷日数は42.4日です。

全国の平均雷日数は19.4日ですから、2倍以上という多さです。

続いて、2位福井県、3位新潟県、4位富山県、5位秋田県と続き、北陸地方が上位を占めています。

これには理由があります。実は、これらの地域は夏だけでなく冬にも雷が多発しているからです。

気象庁のデータ(2005年〜2017年の「落雷害の報告数」)によれば、11月〜2月には太平洋側に比べ、日本海側で落雷が圧倒的に多くなっています。

そして、雷の発生が全国的に増える7月から8月にかけて太平洋側で多くなってきます。


日本海側に多い冬の雷(冬季雷といいます)は、日本海を流れる暖流である対馬海流の暖かい海面に大陸からの寒気がぶつかり、雷の源である積乱雲が発達することで起こります。

冬季雷は、夏の雷に比べ100倍以上のエネルギーを持つものがある、昼夜を問わず発生する、いきなり落雷するので予測が難しいといった特徴があります。

日本海側に続いて多い九州地方は、梅雨や夏季の雨天の多さ、低気圧や前線通過時の発雷が影響していると考えられます。


<年間雷日数>

順位/都道府県(観測地点)/年平均の雷日数

01位 石川県(金沢) 42.4日
02位 福井県(福井) 35.0日
03位 新潟県(新潟) 34.8日
04位 富山県(富山) 32.2日
05位 秋田県(秋田) 31.4日
06位 熊本県(熊本) 26.6日
07位 鳥取県(鳥取) 26.4日
08位 島根県(松江) 25.4日
09位 鹿児島県(鹿児島)25.1日
10位 栃木県(宇都宮) 24.8日
11位 福岡県(福岡) 24.7日
12位 宮崎県(宮崎) 24.1日
13位 佐賀県(佐賀) 22.6日
14位 奈良県(奈良) 22.2日
15位 沖縄県(那覇) 21.6日
16位 長崎県(長崎) 21.1日
17位 群馬県(前橋) 20.4日
18位 京都府(京都) 20.3日
19位 大分県(大分) 20.0日
20位 岐阜県(岐阜) 19.9日
21位 埼玉県(熊谷) 19.7日
22位 山口県(下関) 18.7日
23位 長野県(長野) 18.6日
24位 滋賀県(彦根) 18.1日
25位 静岡県(静岡) 17.0日
26位 茨城県(水戸) 16.7日
27位 愛知県(名古屋) 16.6日
28位 大阪府(大阪) 16.2日
29位 青森県(青森) 15.5日
30位 山梨県(甲府) 15.4日
31位 高知県(高知) 15.2日
32位 広島県(広島) 14.9日
33位 山形県(山形) 14.7日
34位 徳島県(徳島) 14.6日
35位 千葉県(銚子) 13.8日
36位 岩手県(盛岡) 13.7日
37位 三重県(津) 13.6日
38位 兵庫県(神戸) 13.5日
39位 福島県(福島) 13.3日
40位 愛媛県(松山) 13.2日
41位 東京都(東京) 12.9日
42位 神奈川県(横浜) 12.6日
43位 香川県(高松) 12.3日
44位 岡山県(岡山) 11.9日
45位 和歌山県(和歌山)11.8日
46位 宮城県(仙台) 9.3日
47位 北海道(札幌) 8.8日

※気象庁データより。1981年〜2010年の平均雷日数。雷電(雷鳴と稲妻)または雷鳴のいずれかを観測した日数



雷が発生するメカニズム

雷は発達した積乱雲(雷雲、入道雲)によってもたらされる放電現象です。

雲の高さは夏には7,000m以上、冬は4,000m以上になります。




発達した積乱雲の中には無数の小さな氷の粒があり、これらがぶつかり合うことで静電気がおこります。

そして、雲の上層には正電荷が、下層には負電荷が集まり、電荷の偏りが生じます。

この偏りを中和しようと雲から地面に向かって放電するのが落雷(対地放電)です。

この放電は雲と地面の間だけでなく、雲の中や雲と雲の間でも起こります。

これを雲放電といいます。

稲妻が雲の中を横走りする雲放電の映像や写真をご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。


雷サージの種類

雷が落ちると瞬間的に異常高電圧が発生し、その影響で異常な過大電流が流れることを「雷サージ」といいます。

雷サージは次の3つに分類されます。

<直撃雷>

電柱や配電線、避雷針、アンテナなどに直接落雷するものです。

発生する電圧は100万ボルトを超えるといわれています。

<誘導雷>

建物の周辺への落雷で発生した電圧が誘導電流を引き起こし、配電線などを通して建物に流れ込む現象です。

落雷により電気機器などを故障させる原因の大部分を占めています。

<逆流雷>

構造物や大地などへの落雷による接地電位上昇によって、落雷電流の一部が建物内に逆流することをいいます。

誘導雷と同じく、電気機器などを故障させる原因となることがあります。




雷による被害と損害額

雷被害の99%は誘導雷・逆流雷などの非直撃雷によるものだとされています。

雷サージによる被害は、自動火災報知器、電話、監視カメラ、コンピュータ、空調、テレビ受信機など広範囲の電気機器に及びます。

被害総額は推定で2000億円ともいわれています。

これらの被害額は機器の故障といった直接的な損害だけでなく、操業休止など2次的な被害を含んだものです。

また、被害額は年々増加しているとされており、異常気象による集中豪雨やゲリラ豪雨など雷発生の増加を懸念する見方もあります。

被害額の増加は、企業や社会を取り巻くデジタル化の進展とも関連していると思われます。

電子機器は小さな電圧で動く省エネルーギー化、ICチップをはじめとする部品の高密度化が進んでいます。

それらの進化は、反面では大放電量、高電圧の雷被害に対する脆弱性をもたらしているともいえます。


企業を守るための雷対策

適切なシステムの構築やサージ防護デバイス(SPD)の設置などによって、雷被害はほぼ回避することが可能とされます。

しかし、雷サージは侵入経路が不明なことが多く、機器の不具合においても一般的な故障と見分けがつきにくいという問題もあります。

その意味でも、しっかりした対策を講じるためには、雷サージに精通した信頼できる専門家への依頼が重要になってきます。


まとめ

地域によって時期も頻度も異なる落雷の発生。

そして、企業に与える大きな損害。異常気象やデジタル化ともあいまって、落雷対策は企業活動に欠かせない課題であることを見てきました。

備えあれば憂いなし。

雷対策のご検討をおすすめいたします。

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