新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要が増加し、Amazonや楽天市場などを代表とするEC市場が拡大しています。
市場の拡大、物流量の増加により物流業界では人手不足など大きな課題を抱えています。
物流業界の「2024年問題」とは?
物流業界における「2024年問題」とは、政府主導で開始される「働き方改革関連法」の自動車運転業務への適用により発生すると危惧されている、経営・トラックドライバー不足・輸送停滞問題です。
まず「働き方改革関連法」とは、働く人のワークライフバランス実現のための長時間労働の抑制、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保などを目的として、関連法(労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、労働者派遣法など)を改正するものです。この法案は2019年に施工されていますが、車両運転業務に関しては2024年まで猶予期間があります。
2024年までに遵守する体制を整えることが必要ですが、具体的にどのようなことが変わるのでしょうか。
①時間外労働時間の上限規制
時間外労働時間とは、法定労働時間(1日8時間まで、1週間40時間まで)を超えて働いた時間のことで、一般的に残業時間と呼ばれているものです。一般則については「年間720時間以内(休日労働を含まない)」「単月100時間未満(休日労働を含む)」「2~6か月平均で80時間以内(休日労働を含む)」という規則があります。
一方、自動車運転業務ではこの一般則と異なり、時間外労働時間について「年間960時間(休日労働を含まない)」という規則が適用されます。
②同一労働同一賃金
同一労働同一賃金とは、同一企業・団体における正規雇用労働者と派遣やパートなどの非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。給与体系や評価基準、また運送業ならではの無事故手当などをはじめとした各種手当についても見直しが必要となってきます。
③月60時間超の時間外労働の割増賃金引上げ
2023年4月から中小企業を対象に、月60時間を超える時間外労働について割増賃金率25%から50%への引上げが予定されています。注意すべきはこの改正は2024年からでなく、2023年からの適用ということで早期の対応が必要となってきます。
解決すべき物流業界の課題
人手不足・高齢化
物流業界の課題の中で働く人材という面で、「人手不足」と「高齢化」が挙げられます。厚生労働省のデータによると、トラック運転手の有効求人倍率は全職業平均よりも約2倍高いことが分かります。
またトラック運転手の年齢についても、厚生労働省の「令和2年 賃金構造基本統計調査」によると、全産業平均が43.2歳であることに対し、大型トラック運転手は49.4歳、中小型トラック運転手は46.4歳となっており、高齢化が進んでいることが分かります。この状態が続くことで更なる人手不足に陥ることが想定されます。
物流量の増加
冒頭で触れたとおり、Eコマースの拡大により物流量が増加しています。
経済産業省のデータによると、継続して右肩上がりであることが分かります。2020年の数値は全体ではほぼ横ばいですが、これはコロナ禍による旅行サービス等の縮小によるもので、物流に関わる物販系分野は大幅に増加しています。
今後も更なる拡大が想定されています。
課題の解決のためにできること
労働環境の改善
時間外労働時間に上限が設定されることによって、トラック運転手1人あたりの売上は減少することが想定されます。
そのなかで会社を運営していくためには、ドライバーの確保が急務となってきます。
ドライバーを確保するためには、労働環境の改善に取り組み、仕事を探している人が働きたいと思える会社作りを行うことが必要です。
具体的には、低賃金や長時間労働といった物流業界全体のイメージを払拭する給与体系や労働時間の制度の構築、時短勤務など多様な働き方の導入、他各種手当などの福利厚生制度の充実などが挙げられます。
ITの活用
適切な労務管理、労働環境を実現するために効果的なものとしてITの活用が挙げられます。DX(デジタルトランスフォーメーション)がいたるところで推進されていますが、これは物流業界も例外ではありません。
デジタルタコグラフを活用した労務管理や、車両管理システムの導入による車両の稼働率向上が期待されます。
このようなITの活用を行うことで2024年問題の解決につながるでしょう。
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参考:
・厚生労働省「働き方改革~1億総活躍社会の実現に向けて~」
・厚生労働省「トラック運転手の長時間労働改善に向けたポータルサイト」
・経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
文:エネルギー事業部営業戦略課 髙野龍太郎