アンモニアで脱炭素?~前編~

アンモニアで脱炭素?~前編~ 皆さんは「アンモニア」にどういったイメージをお持ちでしょうか。私は学生の頃に理科の実験で学んだ、刺激臭のするものというイメージしかこれまでは持っていませんでした。しかし、その「アンモニア」が脱炭素に向けて今、非常に注目を浴びています。

脱炭素が期待されるアンモニアについて


■アンモニアとはどういうもの?

アンモニアは、常温では無色で強い刺激臭を持ち、劇物に指定されるほどの毒性があるという特徴を持っています。“NH₃”という分子式からも分かる通り、窒素と水素から構成されています。
既存の用途としては、そのほとんどが肥料や工業用で使われています。また、大きな特徴として世界のアンモニア生産量は約2億トン(2019年)ありますが、世界の輸出入量で見ると、約2,000トンしかありません。つまり、生産されたアンモニアの9割がそのまま生産国で使用されているということになります。

■アンモニアが期待されている理由とは?

そんなアンモニアが、なぜ今注目されているのでしょうか。それはアンモニアを“燃料”として使用することで、脱炭素に繋げようという研究が進んでいるためです。これは、アンモニアが燃焼時にCO₂を排出しないという特徴を利用したものです。



日本の電源の7~8割は石炭や天然ガスを燃料とした火力発電で占められています。ここにアンモニアを混焼する実証実験が始まっています。さらに将来的には、アンモニアだけで発電する専焼を目指しています。

シミュレーションではありますが、国内の石炭火力発電所すべてでアンモニアの20%混焼を行うと、年間4,000万トンほどのCO₂排出量の削減が見込めます。日本の電力部門のCO₂排出量は年間約4億トンですので、約10%の削減に繋がります。

こういった理由から、燃料としてのアンモニアが脱炭素に向けて高い貢献度が期待され、注目を集めています。私自身も、水素と並ぶ「次世代エネルギー」として最も注視しているもののひとつです。水素エネルギーと比較したときのさらなるメリットもありますので次回ご紹介いたします。

しかし、現在実証段階であり期待度の高い燃料としてのアンモニアですが、課題も多くあることも事実です。後編では、アンモニアの課題や現在行われている実証実験などをご紹介します。

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参考:
経済産業省 資源エネルギー庁                                                                   日本肥料アンモニア協会

文:エネルギー事業部 営業戦略課 髙野龍太郎