内燃機関の今後は?トヨタの挑戦


政府が2050年までのゼロエミッション(=温暖化ガス排出量を実質ゼロ化)を打ち出してから、ガソリン車の電気自動車(EV)への置き換えが、二酸化炭素(CO2)ゼロへの最有効策であるかのような雰囲気が生まれてきています。
しかし、日本の電源構成は、火力が約77%、再生エネルギーや原子力が23%であり、電力使用がピークに達する夏季には、日本の乗用車すべてをEV化した場合、電力不足に陥る計算です。
EV化を進めるにしても、CO2を大量に排出する火力発電でつくった電気で動かすのでは意味がなく、電源を原子力や再生可能エネルギーにしないと(カーボンニュートラルという目標に対して)意味を持ちません。

【トヨタの挑戦】



そんな中、2021年5月21日から23日にかけて、富士スピードウェイで行われた24時間耐久レースに、トヨタは「カローラ スポーツ」をベースに水素エンジンを搭載した競技車両「カローラH2コンセプト」を投入しました。
水素エンジン車で24時間レースに挑んだ世界初の試みは、目標としていた完走を果たし、見事成功に終わりました。

この活動のコンセプトは「既存の内燃機関技術をなるべく活用して水素エンジン化する」というところにありました。それが実現できれば、既存のクルマのエンジンを水素化してカーボンニュートラルに大きな武器になるとトヨタは考えたからです。
水素エンジンは、出力特性としてトルクの立ち上がりが速く、重いものを一定の速度で運ぶことが得意な一方で、水素タンクを積むスペースが必要となるので、スペースに余裕がある商用車に向いているのではないかという話もありますが、その可能性はまだまだ未知数です。
いずれにせよ、水素エンジンをものにすることはすなわち、日本の自動車産業が得意とする内燃機関技術を生かすことにつながります。

水素エンジンの実用化へ向けたトヨタの挑戦は、まだ始まったばかりです。

トヨタ自動車の社長であり、日本自動車工業会(自工会)会長でもある豊田章男氏は以下の言葉を残しています。

「水素エンジンで走るのも、ゴールはあくまでカーボンニュートラルです。総理の発表以降、自工会の会長として、順番を間違えないでほしい、選択肢を増やしてほしいと、ずっと依頼してまいりました。電動化のなかですべてがBEVになったら100万人の雇用が失われますよということを言ってまいりました。 モータースポーツの現場で、その選択肢のひとつを実証実験する機会が訪れました。今回のレースで使用する水素は、福島県浪江町の水素ステーションから、グリーン水素を運んでいただいています。カーボンニュートラルにはこんな選択肢もあるのだと知っていただきたい。」

文:エネルギー事業部 産業エネルギー課 インサイドセールスチーム